硝子戸の中

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『泣くな、新栄』13.無題
『泣くな、新栄』13.無題






「BOSS、おはようございます。」

「おう。
とりあえず今日は朝1人でやっといてくれ。
入荷までにはレジ行くから。」

「はい。分かりました。」

「あとな、」

「はい?」

「今月で店閉めるから、
再就職先考えとけよ。」

「…、は?」

「だからさ、店閉めんだっぺ。」

「え?今月?」

「こんな儲からない店、
やってけるわけねぇべ。
だから閉めんの。」

「…。」

「なんだ?」

「いや、ちょっと、き、急だったんで…。」

「急も何もないべ。
再就職先くらいあんだろ?」

「いや、当てもないですし、
考えてもなかったんで。」

「なんだ、世話がやけるやつだべ。
俺が世話してやろうか?」

「…、いや、大丈夫だと思います。」

「なあ、お前なんか文句あんのか?」

「いや、文句なんて、ただ急だなって。」

「急だなってお前な、
店番中にケータイ見てるは、寝てるは、
そんなことばっかしててよく言うべ。
シフトもほとんどお前の自由だったし、
まだなんか文句あんべ!?」

「いや、だから、文句はないです。
ただびっくりしただけで。」

「そんなのは知らねーっべ。」

「…、知らないって…。」

「あー、朝から気分わりー。」

「…、店開けてきます。」



「ねぇ、村上くん聞いた?
今月でお店閉めるの。」

「聞きましたよ。」

「どう思う?おかしいよね?」

「そうですね。びっくりしました。」

「私たちにも生活があるじゃん。
そんないきなりは無理だよね?」

「そうですね。」

「ねえ、今度BOSSに抗議しに行こうよ。」

「抗議?」

「私たちをどうするつもりなんだって。」

「そうですね。」

「ほんと信じられないよね。」

「信じられないですよね。」

「しかし村上くんは冷静だね。」

「そうですか?」

「全然怒ってるように見えないもん。
何を考えてるの?」

「特に何もない。」

「そう。」

「はい。」






何を考えてるの?

あのね、悪いのはBOSSじゃない。
僕らの方だ。
いくらでもやれるチャンスはあったし、
またお店を建て直すことも
もしかしたら
僕ら発信で何かできたかもしれない。
でもやらなかった。
面倒くさいからやりたくなかった。
そんなことをするやる気もなかった。
働く義務を果たしていない人間に
不平不満を言う権利なんかない。
だから当然、
僕にはその権利はない。
抗議なんかできるはずがないだろ。
何考えてんだよ。
女の子だからアダルトもできないし、
一階のあんな簡単な仕事も
まともに出来ないあなたがよく言うよ。
納得いかないのはあなたがバカだからだ。
平気で無断欠勤をして、
バイト中、
ずっと店舗のモニターで映画を観ていたから、
バカになって分からないだけだよ。


そう思ったけど言わなかった。








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