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『I LOVE YOU TILL I DIE』発売記念 質問ブログ回答編(完全版)14.おそさま
村上さん、こんにちは。
コメント失礼いたします。
さよならパリス、本当にかっこいいですね。
大人がこれをやるから素晴らしい。
(ちなみに私は村上さんと同じ歳です)
PVの良い意味でブート感というか、大人の本気の遊び心も大変ぐっときます。
ライブ、ぜひお邪魔したいなぁと思っております。
さて、私からの質問ですが、
以前ブログでお母様が絵本の読み聞かせをされていたことと、「でんでんむしのかなしみ」(私もこの絵本のファンです)を紹介されていたことを覚えているのですが、他に好きだった絵本はありますか?
小さいこどもがいるのでぜひ参考にさせてください。
ちなみに私は「さんびきのやぎのがらがらどん」という本がこわくてこわくて、でもなぜか読みたくて、好きでした。
よろしくお願いいたします。

p.s.
東京は今、まるでフィッシュマンズのweather reportの歌詞の冒頭のような状態です。
村上さんの歌詞も季節やにおいで思い出させるものが多いですね。
いつまでも素敵な歌詞と音楽を作ってくださいね。


| おそ | 2016/08/22 4:02 PM |




おそさま

お世話になっております。村上です。

文章を拝見させて頂き、
おそさまはおそらく過去に何か書かれていたか、
もしくは本や音楽に精通された方なのかなと思いました。
『でんでんむしのかなしみ』
については新美南吉さんの作品の中でも
割とコアな作品のような気も致しますし、
台風を例える表現が
フィッシュマンズのweather reportの歌詞の引用というチョイス。
そんな卓越された方に
僕からお話するようなことは
何もない気も致しますが、
せっかくご質問を頂きましたので、
お答えさせて頂きます。

しかし確かに
『さんびきのやぎのがらがらどん』
は僕にとっても怖い絵本だった記憶があります。
内容よりあの絵が怖かった気がしますね。
『かいじゅうたちのいるところ』
もそうですが、
海外の絵本って
たまに線が細くてものすごくリアルで、
『すてきなさんにんぐみ』
みたいなタッチだといいと思うんですが、
でもあれはあれで色使いが妙に怖いですよね。

村上友哉と村上了次(弟兼スタッフ)の生みの親でもあり、
育ての親でもある村上しのぶは
ボランティアで
図書館内で絵本の読み聞かせをやっていました。
僕がいうのもなんですが、
母はなかなか通るいい声をしていた上、
ムダに向上心とまた意識も高かったので、
図書館では重宝されていたみたいで、
週1くらいで
この読み聞かせにお呼ばれをして、
母が通っていた記憶があります。
僕が大学生くらいの時、
二、三度覗きに行ったことがあったんですが、
騒がしい子供たちの扱いも含め、
なかなか手慣れていて
観ていて感心したのを覚えています。
おそらく
僕らが産まれた後から始めたと思うんですが、
物心がついた頃には通っていた。
そんな記憶があります。

母にとって僕たちはいつでも観客でした。
図書館での本番に合わせて、
リハーサルのようなものだったのでしょうか。
今振り返ると
母は異常に
「引き込みたい。」「笑わせたい。」
そんな気持ちの強さが随所にあり、
言い方や声色で
アドリブが利きそうな絵本をよく選んでいた気が致します。
そんな中で1番記憶していて、
僕らが何度もアンコールをした絵本は
『サラダでげんき』
(作・角野栄子/絵・長新太)
です。
内容は教科書にも載っていたので、
ご存知かも知れませんが、
お母さんが病気になった娘が
お母さんを元気にするために
1人サラダを作る奮闘記レシピ絵本です。
途中からは完全に浮世離れした内容なので、
今読むと作者の意図は全く分かりませんし、
普通に読んでも
ちっとも面白くないかも知れませんが、
この作品が好きだった理由は、
長新太さん特有のハイブリッドな色使いと
何よりも母の読み方でした。
母は新しい登場人物が現れるたび、
声色を変え、
絵本にはないセリフを足したりしていました。
馬だったらちょっと低音を利かした声で
「何々だヒヒーン」とか、
犬だったらちょっと可愛らしい感じで
「何々だワン」とか、
ひどい部分だと
アリが出てくるとトーンを小さな声に変え、
「何々だ、アリアリ」とか、
ストーリーが一本調子にならないように
そして
子供がお話に引き込まれるように
勝手にカスタマイズしていったのです。
「あははは、アリは鳴かないよー。」
そんな風に僕とりょうじが笑うたび、
「分かんないよー。
とも(友哉)とりょう(りょうじ)には聞こえないだけだよー。」
と母は一層はりきってアドリブを効かせました。
子供が声をあげて笑い、
読む母も嬉しそうに笑う。
そういう絵本が好きだったし、
そういう空間が好きでした。
そう思うと
おそさまのプレッシャーになってしまうと申し訳ないのですが、
子供にとっての絵本は
内容と同じくらい
読み手に掛かってくるのかも知れませんね。

母は僕に絵本だけではなく、
本全般はいつでもお金をくれました。
そこまで裕福な家庭でもなく、
またテレビのバラエティーも
20時以降は観せてもらえないような
厳しめの教育方針の両親でしたが、
漫画以外の本なら
いくらでも無制限で買ってくれました。
そういえばこの前、
そんな話を母としていると
母から衝撃的な話を聞きました。

「お母さんは本が嫌いだから、
子供たちには無理矢理でも読ませたかった。」

母は本が好きなんだから、
好きでやっているんだと思っていました。
実は真逆だったのです。
おそらく母が絵本に関心が出たのも
きっと僕らが産まれてからだと思います。
本嫌いを克服し、
悩んだ結果、
絵本に声色を変えたり、
アドリブを入れてくれたおかげで、
本を読む楽しみを覚え、
僕は今でも1人で
本を読む楽しみに浸っていますし、
こうやって何かを書いたりする
楽しみにたどり着きました。
たまに
僕のような人間が書いた文章を褒めて頂くことがあり、
いつも本当に嬉しいんですが、
僕からすると
そういう機会を与えてくれ、
僕らのために
本嫌いを克服してくれた
母を褒めてあげてほしい
というのが素直な気持ちです。
文のまとめとしてではなく、
本当にそう思っています。

しかし
絵本を通して、
母が子供を育て、
またその子供を通して、
母が育つ。
いやー、
絵本って素晴らしいカルチャーですね。


コメントありがとうございました。


おそさまのお子様たちが
すくすくと成長されることをお祈りしつつ、
お会いできる日を楽しみにしております。




村上
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