硝子戸の中

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コラム『首のたるみが気になるの』












『首のたるみが気になる』


ここ数年、
ライブハウスで出会う人達が
基本的に年下になってきた。
年上なのはライブハウスの店長、
PAもしくはスタッフさんで、
対バンや来て頂くお客さんを含め、
過半数以上は年下になってきている。
バンドを始めた頃は10代だったが、
今では32歳になり、
周りを見渡してみると
当時同じ時間軸で活動していたバンドたちは
ほとんど辞めてしまっているか、
仕事として結果を出して
続けているかどちらかしかいない。
明日、照らすとして名を名乗り、
バンドとして10年ほど活動をしてきたが、
その間に
ミニアルバム1枚にフルアルバム2枚だけのリリースで、
たいして結果も出ていないのに
今だに活動しているバンドを
僕はこのバンド以外知らない。
それに気がつき出した頃、
最初はそういう環境にちょっとした疎外感があり、
年下ばかりの楽屋で多少の居心地の悪さを感じていたが、
最近ではあまり気にならなくなってきた。
そういう厚かましくなったところも含めて
自分は今30代になっているんだろう。
もちろん
老いを語れるほど老いてるとも思わないが、
全国のバンド人口の平均を取れば、
「そこそこいい年齢」
の部類に入るのは間違いない。

今池に住んでいると年を取らない。
厳密に言えば年を取っていることに気が付かない。
周りに住んでいる友人はほぼ年上で、
僕のアパートに遊びに来る友人も1.2歳しか変わらず、
またHUCK FINNで出会うバンドマンたちは
先輩が多いため、
自分の年を聞かれて答えると
「まだ若いね。」
と今でも言われることがある。
昔は全く思わなかったが、
「まだ若いね。」
と言われると
「まだ希望がある。
まだどうにでもなれるよ。」
と言われたような気がして、
ちょっとだけ嬉しくなってしまう自分が最近いる。
本当に惨めな感性に育ってしまったが、
そんな気持ちで意気揚々と
他のライブハウスに行き、
楽屋でいつも通り疎外感を感じ、
またある日、
高校の頃の友人と会い、
最近の同級生達の話をして、
「あいつが家を買った。」
「あいつの子供が小学校に入った。」
というフレーズで
すぐさま現実に引き戻され、
「きっともう希望はない。
もうどうにでもなれない。」
と1人ため息をつきながら、
「まだ若いね。」
という魔法の言葉を求めて、
今池へと帰る日も少なくない。

『首のたるみが気になるの』は
映画『恋人たちの予感』
『めぐり逢えたら』
『ユー・ガット・メール』
の脚本兼監督をし、
ラブ・コメディの女王として名を馳せた
ノーラ・エフロンのエッセイを
テレビ番組『サワコの朝』や著者『聞く力』
でおなじみになっている
阿川佐和子さんが翻訳をした
「年をとること」
をテーマに書かれたエッセイ集ではあるが、
この本の中では
「年をとること」
についての美談は一つも出てこない。
もっと若さをなぜ楽しまなかったのか、
老いることはなんて残酷で悲惨なことか、
ということに関して、
女性の目線で女性ならではの言葉遣いで
書かれていて、
本当に読んでいて吹き出しそうになるくらい
楽しい本だった。
たまに
「JFKが私以外のインターン(職業体験)の学生に手を出した」
「ビル・クリントンと付き合っていた」
という嘘のような本当の話も出てくるが、
それは全体のエッセンス程度で、
例えばタイトルにもなった
「首のたるみが気になるの」
のエッセイの中では、
「「更年期について素晴らしい、
老いてようやく人生で本当に大切なことに気づかされる」
と書かれた本はたくさんあるけど、
そんなことを平然と語る人たちが信じられない。
この人たちに首はないのか?
首が隠れる服を探すのに苦労したことがないわけ?
欲しい!と思ったドレスの90%は、
その大きな襟ぐりのせいで「ああ、無理」
と断念してきたのよ!
首にぴったりと巻きつくチョーカーを買わなきゃならないときの、
あの惨めな気持を、
アンタは味わったことがないんでしょう、
と言いたい。」
と書かれている通り、
アメリカ人と日本人との差もあり、
僕は男性なので
そこまで首を気にしたことはないが、
読み進めていけばいくほど、
「分かる、分かる。」
とそんな不思議な気持ちがしてくる。
何よりも
このエッセイのすごいところは、
ここで終わるところ。
「だけどやっぱり」
「とは言っても」はない。
ただただ老いることへの不満と不安、
自分や周りの友人が死んでいくことへの恐れ、
それだけで終わっている。
「結局、
みんな、そんなもんなんだろうな。」
と希望がないことに僕は希望が持てたし、
そういう人の方が僕は信用できた。


昨日、京都でライブがあった。
後輩のバンドのCDが全国発売されることになり、
そのお祝いで呼んで貰えた。
ボーカルの彼とは前から面識があり、
彼には会うと
「ともやさんは憧れで」
「ともやさんとこうやって話していることが信じられなくて」
と歯が浮くようなことをいつも僕に言ってくれる。
「そんな大したもんじゃないから。」
「大げさだから。」
と彼にはいつも答えているが、
本当に学生の頃から
地元のCDショップで
僕らのCDを買って聴いてくれていたらしい。
30代になり、
不思議とそういうことを言ってくれる子に出会うことがいきなり増えた。
彼等や彼女達が話してくれる
僕の音楽との出会いや
音楽とのエピソードは、
魔法の言葉なんてほど
実態のない軽々しいものではない。
「老いることへの生きがい」
と言っても過言ではない。





追記
京都2日間ご来場、ありがとうございました。
いきなりですが8/26にまた大阪に行きます。
この2日間で思ったことを曲にしました。
良かったら聴きに来てくださいね。
橙々、レコ発おめでとう。
呼んでくれてありがとね。
打ち上げはまた今度。
楽しみにしてるよ。


2017年8月26日土曜日
南堀江SOCORE FACTORY

アマヤドリ企画「CEREMONY」
open:17:00 / start:17:30
adv¥2,000 / door¥2,500(D込み)
※学割/ハシゴ割-¥500有り(併用可)
※学生証/ライブその他の半券提示で割引適用

東狂アルゴリズム
Foxtrot(東京)
脳内麻薬ズ
WEAKEND HEROES(長崎)
ogu.(fog)
johann(柏)
オトワラシ
さよなら三角(明日、照らす)
the caves

チケット予約
goodbyetriangle@gmail.com
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