硝子戸の中

フィクションダイアリー
<< STAY CRAZY/FOREVER LOVE 8『トレイシー・ローズ』 | main | STAY CRAZY/FOREVER LOVE 10『ロリータ』 >>
STAY CRAZY/FOREVER LOVE 9『DOGMA』

 

 

『DOGMA(ドグマ)』

「すいません、ガイドさん。
ちょっといいですか?」
「はい?」
「さっきからどうも腑に落ちなくて。」
「何か?」
「この、ここはなんて建物なんでしたっけ?」
「修道院?」
「そう、
修道院の修道女についてなんですけど?」
「はい?」
「さっきガイドさんは
「ここに入会してからは
外部との接触も一切絶って、
女性だけの共同生活で
ただお祈りと読書と農作業で一日を過ごす」って言ってましたけど、
本当に彼女たちに会って、
話したりできないんですか?」
「彼女たちとは会えません。」
「えー、まじっすか!?
てかこれって本当の話で
今実在している人たちなんですよね?」
「ん?どういうことですか?」
「めちゃくちゃ平たくいうと
この時代に自ら志願して
そんな生活を送る人たちがいることが
信じられないんですよ。
実はいないから隠してんのかなって。
だってそうじゃないですか?
この2017年になってテレビもないし、
ネットもないし、
映画も観れないし、
お笑いも観に行けないし、
音楽だって聴けない。
娯楽が読書だけですよね?」
「そうですね。」
「それでさっき気になって、
ここのパンフレット買ったんですよ。
朝は3:30に起床して、
一日7回のお祈りと労働をして、
7:45に寝る生活って半端ないですよ。
これ、途中で辞められるんですか?」
「入会後、
約半年の志願期、
その後3年の修練期を経て、
最初の有期誓願を宣立、
その後3年を経過して、
盛式誓願を宣立し、
終生にわたる修道生活を誓います。
この6年半なら自由に退会は可能ですよ。」
「もしかして年齢の制限もあるんですか?」
「23〜35歳までの未婚の女性に限ります。」
「若い!老後を神様に仕えるとかじゃないんだ。
ますます分からないなあ。」
「というと?」
「何が彼女たちをそこまで駆り立てるのか。」
「うーん、
皆様はきっとイエス様と結婚するって感じなんですかね。
一生を神様に尽くすという精神のもとで活動されています。」
「んー、
野暮なこと言いますけど、
きっと給料もないですよね?」
「もちろんありません。
農作業や
今さっきあなたが買われた
ここで作られたお菓子も
修道院の生活費に充てられて、
残りは寄付するそうです。」
「まじっすか。」
「まじです。」
「で女だけの生活。
おしゃべりの話題もなくなりそう。」
「基本的に私語も厳禁なので、
修道女さん同士のボディランゲージみたいなもので
日常会話をするそうですよ。」
「すげーな。」
「すごいですよね。」
「いきなりですけど、
僕、
神様がいるのかいないのか、
まだそこまで辿り着いてないんですよ。」
「辿り着いてない?」
「今はいたらいいなと思うけど、
どこかでは
いなくても当たり前って思ってる感じなんですかね。
僕の好きな映画でケヴィン・スミス監督の『ドグマ』って映画があって、
結構宗教的な禁じ手の描写が多いハードなコメディなんですけど。
「禁じ手?」
「休暇で人類を下見に来ていた神様がホームレスに乗り移ったり、
死ぬほどふざけたキリスト像が出てきたり、
「使徒にいた黒人はその存在が抹消された」
とか言っちゃったり。」
「すごいですね。」
「この場所で話題に出すのもはばかれるような映画ですよ。
でもケヴィン・スミスって、
主に作る作品はコメディだけど、
多分、根はカトリックなんですよ。
もしくは家庭がかなり厳格なカトリックだったか。
メイキングで彼が影響を受けた作品を語るシーンがあったんですけど、
マーティン・スコセッシの『最後の誘惑』とか、
フレッド・ジンネマンの『わが命つきるとも』とか、
割とゴリゴリの宗教映画が多くて。
きっと好きだから、
最低限の知識があったから、
あんなブラック宗教コメディ映画が撮りたくなったんだろうなって。」
「へー。」
「近年はブルース・ウィルス主演のビバリーヒルズコップみたいな
分かりやすい刑事モノの『コップアウト』を撮った次に
『レッドステイト』って映画を撮るんですけど。」
「はい。」
「この『レッドステイト』がまあまあ過激な宗教VS国家みたいな、
結局はどっちも批判した映画で。
話の始まりはヤリマンを探す高校生3人組が出てきて、
いつものコメディだと思って観てたら、
途中からいきなり過激な宗教組織が出てきて、
国家の特撮部隊が出てきて、
人が死にまくって笑えないし、
今までとは違って
カメラワークも手ブレが凄くて、
とにかくドキュメンタリー風のリアルな感じで撮っていて、
「あれ?どした?
マイケル・ムーアが撮った映画なの?」
ってくらいメッセージが強くて。」
「どういうストーリーなんですか?」
「まあ簡単に言うと
ヤリマンを探す高校生が
とある宗教団体に拉致された事件をきっかけに
その高校生を国家が奪還しに掛かるんですけど、
間違えてその国家の工作員が人質の高校生を殺したことを
隠蔽するために
口封じも兼ねて宗教団体を皆殺しにするみたいな話ですね。」
「話の入り口と出口が全く違う!」
「そうなんですよね。
宗教と政治の否定。
分かりやすい悪がないから、
誰がよく良くて悪いのかよく分からないんですよ。
政治はちょっと置いといて、
これを見てますます
ケヴィン・スミス自体が
神様について結局はどう思ってるのか、
分からなくなったんですよね。」
「そんな感じしますね。」
「今度公開される
スコセッシの映画の原作になった
遠藤周作の『沈黙』もそうだけど、
結局、
あの小説も最後はある意味で信仰を否定するじゃないですか。
でも遠藤周作自身は相当厳格なカトリックだと思う。
そうなってくると
ケヴィン・スミスもそうだけど、
神様を信じれば信じるほど、
信じられなくなるのかなって、
そんな気がしたんですよ。
だって神様って、
目に見えるわけじゃない分、
本当にいるかいないか分からないんだから。
「神様がいるから毎日健やかに過ごしてるんだろう。」
ってだけで、
明確に何かをしてもらった訳ではないんだし。」
「確かにそうかもしれませんね。」
「だから
とりあえず僕について言えば、
かっこいい言い方をすると
多分今は自分の中にしか
神様は存在してないんですよ。」
「自分の中?」
「はい。
つまり今の僕には
この世界中にある情報や話を読んだり聞いて、
僕が僕の頭の中に勝手に作り出した
神様がいるだけで
実在はしてない存在って言えばいいのかな?
だから
僕自身の中の神様は
自分が作り出したものだから、
他人からどうこう言われたところで、
今は否定も肯定もしようがないわけであって、
だから
もしいつか本気で神様のことを考え出した時は
最終的に自分との戦いになると思うんです。 」
「なるほど。」
「だってここから先、
もっと突き詰めていくと
神様を信じることは、
僕自身の哲学や価値観で作り出したものを
信じてるみたいなことになるような気がしますもんね。」
「そうかもしれませんね。」
「で結局、
何が言いたいかって言うと、
この修道院の彼女たちは
最終的にどう思ったのかなって。
こんなこと言ったら怒られると思うけど、
これだけ毎日そのことだけを考えていたら、
ケヴィン・スミスみたいに
絶対神様の存在を疑うこともあると思う。
こんないっちょ噛みのやつが言うセリフじゃないんですけど、
多分、
その時に初めて神様が本当にいるのかいないのか、
その答えが出る気がするんですよ。」
「答えですか。」
「さっき出てきた『ドグマ』で
とあるカトリックの女性が
神様を信じなくなった時の話をするシーンがあって、
「私が流産した時、
母に
「神様にもきっと何かお考えがあるのよ。」
って言われて、
「結局、
カトリックとしてお祈りをしたり、
教会に通ってきたけど、
こんなけ悲しい思いをしても
神様は助けてくれなかった。」って悟るって。」
「なるほど。」
「ただ神様を信じていたから、
これくらいで済んだって考え方もありますけどね。
本来なら赤ちゃんと一緒に本人も死んでたかもしれないし。
『ドグマ』の彼女はこの時、
おそらく
神様はいないって悟ったんだと思うんですよ。
でも絶対違う逆のケースで
「神様はいる」って悟った人もいると思う。」
「…、」
「だからこの中にいる彼女たちは、
一生を掛けて
その辿り着いた先に何が見えたのか?
ちょっと聞いてみたかったなって。
しかも彼女たちは無益じゃないですか。
あるのは純粋な信仰心だけ。
僕、無益の信仰心って
人間の持てるエネルギーの中で
最大の力だと思うんですよ。
たまに自分が困った時だけ
神社に行ってお賽銭して、
「よろしくお願いします。」
とか言ってるくらいの信仰心しかない
僕みたいな奴には
絶対にそこまでは辿り着けるはずがない。
僕の行為はどう考えても
お金を払って、
「助けて下さい」
ってちゃんと見返りを求めてますからね。」
「そこに繋がるんですね。
ただ…」
「あっ、え?はい?」
「あなたは普段、何考えてるんですか?」
「えっ、なんで?
なんか変なこと言ってました?」
「こういうのに普段から興味があるのかなって。」
「あははは、むしろ逆です。」
「逆?」
「全くないからちょっと知りたくなったんですよ。」
追記
北海道に観光で修道院に行った時の思い出話でした。
ただしお気付きの通り、ほぼフィクションです。
| - | 00:06 | - | trackbacks(0) |
この記事のトラックバックURL
http://blog.asstellus.com/trackback/1632358
トラックバック
CALENDAR
S M T W T F S
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930     
<< September 2019 >>
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
SELECTED ENTRIES
CATEGORIES
ARCHIVES
RECENT COMMENT
モバイル
qrcode
LINKS
PROFILE